診療報酬

補正予算中で医療機関(医療従事者)へ直接関与する項目とは?

新型コロナウィルスの感染拡大は、現在、第4波を迎えつつあります。政府は昨年、新型コロナウィルス感染症対策費として、中国からの帰還者のためのチャーター機費用など約600億円以上の他に、4月には第1次補正予算(約26兆円)、5月には第2次補正予算(約32兆円)、さらに12月第3次補正予算(約5兆円)を成立させました。

公表されている資料中、「一般会計」、「特別会計」などの記載があり、実際の補正予算の総額や重複する金額、さらに使用用途など、よく理解できない内容が多いため、ここでは特に医療機関(医療従事者を含む)に直接関係すると考えられる項目、内容を再確認しました。

第1次補正予算では、国民に一律10万円の給付や個人及び事業者などへの持続化給付金、家賃補助(都道府県からの補助)などがなされました。経済活動が停止してしまった状況で、一時的には助かったものの、給付のあり方やスピード感などについては多くの問題が浮き彫りになりました。

医療機関(医療従事者を含む)に直接関係すると考えられる項目は、下表(表1)中の赤点線で囲われたものです。ただし、人工呼吸器が整備されたのかどうか、応援医師が派遣されたのかどうか、マスク(「アベノマスク」(通称)ではありません)等が配布されたのかどうか、そしてこれらの費用はすべて使い切ったのかどうか、検証された報告は確認できていません。

第1次補正予算における直接の医療機関(医療従事者を含む)関係の予算額は、合計約1,600億円と抽出されます。

表1 第1次補正予算の概要

次に、第2次補正予算では、直接医療機関(医療従事者を含む)に関係する予算として、「ウィルスとの長期戦を戦い抜くための医療・福祉の提供体制の確保」(約2兆7,000億円)という項目があげられています(表2)。

その中でも、重点医療機関への支援、救急・周産期・小児医療機関の院内感染防止対策や医療機関・薬局等の感染拡大防止のための支援、医療物資の確保・医療機関等への配布、医療従事者への慰労金が該当します。

ただし、緊急許可された「レムデシベル」の使用状況も不明瞭ではありますが、記載されいます「アビガンの確保」の費用(139億円)は、未だ使用許可がされていないことと合わせて、どのどうなったのでしょうか。

表2 第2次補正予算の概要

具体的な内容としては、新型コロナウィルスの疑いのある患者の診療を行う救急・周産期・小児医療機関の院内感染対策として実施する、陰圧装置や簡易ベッド、簡易診察室、HEPAフィルター付き空気清浄機、HEPAフィルター付きパーテーションなどの設置、個人防護具の用意、消毒作業の経費などに要した実費を全額補助することとなっています。その内訳(上限)は、、下表(表3)の通りとなります。

表3 救急・周産期・小児医療機関の院内感染対策費

病床 追加(加算) 支援金額
90床以下   2,000万円
100床以下   3,000万円
  100床毎 1,000万円
型コロナウィルス患者の入院受入れ医療機関に対する上記金額への加算 1,000万円

上記に該当しない医療機関や薬局などでも消毒や発熱者の動線確保などの感染対策が求められるため、費用の実費を全額補助することとなっています(表4)。

表4 救急・周産期・小児医療機関以外の院内感染対策費

医療機関等 支援金額
病院 200万円+病床数×5万円
有床診療所(医科・歯科) 200万円
無床診療所(医科・歯科) 100万円
薬局、訪問看護ステーション、助産所 70万円

加えて、病棟ごとに対応している重点医療機関では、ゾーニングのために休止した病床にも「空床確保料」を補助することとしていました。第2次補正では、ICUで空床を確保した場合の「空床確保料」を1日1床当たり97,000円から301,000円に増額することとなりました。

超音波画像診断装置、血液浄化装置、気管支ファイバー、撮影装置、生体情報モニターなどの整備についても支援するとしています。

また、第1次補正予算の項目と重複するマスクなどの医療用物資の確保と、必要な医療機関等への配布、あるいは備蓄のための費用(4,379億円)も再度盛り込まれています。

医療従事者への慰労金としては、当初、感染患者の入院を受け入れていた医療機関に勤める医療従事者に対して20万円を支給しましたが、その後、感染患者と接する可能性のある事務職員らも支給対象となりました。さらに、入院を受け入れなかった場合でも10万円を支給することとなり、医療従事者らとは別に、介護・障害福祉事業所の職員に対しても5~20万円の慰労金を支給することとなりました。

第2次補正予算において、直接医療機関(医療従事者を含む)に関係する予算額は、合計約2兆1,000億円に達するとされています(内訳が正確に把握できない部分あり)。

第3次補正予算としては、追加額として4兆7,330億円が計上されています。

直接医療機関(医療従事者を含む)に関係する項目しては、「地域の医療提供体制を維持・確保するための医療機関支援」があげられ、金額は1兆9,374億円とされています(表5)。

表5 第3次補正予算の概要

医療機関向けの予算額は、計2兆1,000億円に達する他、患者が大幅に減少した4月以降の診療報酬が支給される6月の資金繰り対策としての診療報酬の概算前払いなど、優遇融資の原資として1兆2700億円を確保しているとのことでしたた。

第3次補正予算では、第2次補正予算による補助を受けた医療機関も、改めて対象となる支援策が含まれています(表6)。ただし、国立病院機構にのみ「医療提供体制の整備費」として別途93億円が計上されている点は、疑問の残るところです。なお、医療機関が対象となる経費を誤認して金額を過少に申告した場合の再申請について、「事業実施主体である都道府県に相談して都道府県が認めた場合、再申請することは差し支えない」と記載されていますのでご確認下さい。

表6 第3次補正予算の追加支援内容

対象 支援金額 条件
都道府県の指定に基づき発熱患者等を対象とした外来体制をとる医療機関 上限:
100万円
 
都道府県の指定を受けた診療・検査医療機関 上限:
100万円
第2次補正予算の「医療機関・薬局等における感染拡大防止等の支援」の補助を受けた医療機関も補助対象
重複不可・対象外あり
令和2年12月15日から令和3年3月31日までにかかる感染拡大防止対策や診療体制確保等に要する費用(例:消毒・清掃・リネン交換等の委託、感染性廃棄物処理、個人防護具の購入、寝具リース、CTリース等)
院内等での感染拡大を防ぐための取組を行う、保険医療機関、保険薬局、指定訪問看護事業者、助産所 病院・有床診療所 (医科・歯科) 25万円+病床数×5万円
無床診療所 (医科・歯科) 25万円
薬局、訪問看護事業者、助産所 20万円

第3次補正予算において、直接医療機関(医療従事者を含む)に関係する予算額は、表から合計約1兆4,600億円と算定されます。

以上、第1次、2次及び3次補正予算において、医療機関(医療従事者を含む)に直接関係すると考えられる予算の概要と金額について確認してきましたが、記載されている補正予算の総額が約63億円に対して、直接医療機関(医療従事者を含む)に関係する予算としては、約3兆7,200億円(5.9%)と確認されました。

感染患者を支えている医療機関(医療従事者を含む)への支援としては非常に少ない金額であり、対応する病院(医療従事者)数が増えない要因の一つとなっているのではと推察されます。

支援に対する申請の面倒さや支給の遅延も言われている中で、医療機関側も、安全で、安心な医療体制を確保・維持していくために支援内容の詳細をしっかりと把握し、しっかりと支援金を確保するとともに、現場からの具体的な内容で、さらなる支援を訴えていく必要があります。

なお、診療報酬等についても、昨年より期間限定で変更されていますので、漏れのないようご確認下さい。

また、今回は予算の概略とその中の関係する内訳例について確認しましたが、さらなる詳細な内訳資料も厚生労働省等から公表されていますのでご確認下さい。

参照:
1. 「令和2年度 厚生労働省一次・二次・三次補正予算概要」厚生労働省(2020年)より抜粋
2. その他、新聞、ネット情報より抜粋

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