先進事例

清掃ロボットの導入

 病院の外部委託業務の中で、清掃は種々の場所、広範囲での作業となりますため、多くの人員を要する業務となります。現在、清掃業務においても人手不足は、大きな問題となっており、地域によっては人員の確保が難しく、受注したくても受注できないという状況が生じています。

 そこで、求人以外の方法として、清掃ロボットの導入が考えられます。

 清掃ロボットは、すでに埼玉医科大学国際医療センターなどへ導入されています。

 清掃ロボットは、現在、除塵用(7社)と洗浄用(4社)のタイプが開発されておりますが、現在のところワックスがけ・剥離用のロボットはないようです(参照:各社資料より抜粋/下図/2018年9月現在)。

【除塵用】

【洗浄用】

 除塵用は、大きいものもありますが、ほぼ30㎏程度の大きさで、洗浄用は、水などを使用するため大きいもの(300kg以上)となっています。それぞれ種々のセンサーで障害物を避け、稼働時間は除塵用で2-4時間(充電時間2-4時間)、洗浄用で2-4時間(充電時間6-12時間)とされています。

 現在のところ、これらの大きさのロボットができる作業区域は、受付の待合、廊下などの面積が広い所に限られると考えられます。病室などは、患者さんがいることや医療関係者が出入りすること、什器などが多数ある、などの状況から現時点では導入は難しいようです。家庭用の小型清掃ロボットのようなもので、前記の各機能を持ったロボットの開発が期待されるところです。

 また、清掃のための走行・設定方法としては、現在、自律走行型(ボタンを押すだけでランダムに走行)、マッピング方式(事前にパソコンやタブレットで現場の図面を取り込み、走行する場所を設定。センサー/障害物・接触センサー、3Dカメラなどにより自ら現場の三次元地図を描いて走行)及びトレース方式(人が最初に操作して動線を憶えさせての走行)の3方式があります。それぞれ自律走行型は、小規模室内向きでムラが出る、マッピング方式は、作業範囲が広い場合には設定が早いもののレイアウトの変更対応が不可、トレース方式は、作業範囲が広い場合には設定が大変であるがレイアウトの変更対応が可能、などの特徴を持っているとされています。ちなみに、これまで、自律走行型は1社(除塵用)、マッピング方式は7社(除塵用5社、洗浄用2社)、トレース方式は3社(除塵用1社、洗浄用2社)が開発されており、さらに機能が更新されているようです。

 清掃作業者の人数は、㎡数や病院種類(診療科・規模・階数など)の違いにより異なりますが、約200床の病院で約12-13人(総数)と算定されており、これらの人件費とロボット導入による費用対効果を検討することが必要であり、現在稼働しているとの事例が参考となると考えます。

 以上、床の清掃ロボットについて調査した結果、自律走行型あるいはマッピング方式において、除塵、洗浄及びワックスがけ・剥離の作業が1台でできるロボットはないこと、家庭用清掃ロボットのように自動での充電は現状不可能なこと、エレベータ自動乗降(エレベータの自動呼び出しと乗り降り)機能はないこと、壁や天井用の清掃ロボットはないこと、などが確認できました。需要に合わせて、今後さらに進歩していくことが期待されます。

 その他、ガラス清掃ロボットは既にあり、建物によっては清掃が不可であったガラス清掃のあり方も変わって行くものと考えられます。また、空調も家庭用では自動内部清掃の機能が当たり前に付いてきており、病院でも同様の機能が付加されれば、空調清掃のあり方も同様に変化していくこととなります。

 また、専門的な技能を必要としないポリッシャーなども開発されているようですので、訓練を必要としない清掃のあり方(熟練者の配置が不要な状況)へと変化しつつあるようです。

 このように病院清掃のあり方が変わりつつある中、病院の設計や運用も変わって行かなければならないのではないかと考えております。

参照:第6回「病院のみらいWeb」研究会主催2019セミナー「AI&ロボット化は人手不足の解決策(パートナー)となるか?~現場のAI&ロボット活用のみらい~」(病院のみらいWeb研究会 大谷勇作、2019年8月7日)講演資料より抜粋

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