病院・診療所の経営

中小病院の生き残り戦略としての地域医療連携推進法人とは?

 地域の医療機関相互間の機能分担・連携を推進し、質の高い医療を効率的に提供するための制度として「地域医療連携推進法人」制度(安倍首相の医療法人の持ち株会社/ホールディング・カンパニー化の発言から進展/米国のメイヨ―・クリニックなどの例があります)が創設されました。

 以下、この「地域医療連携推進法人」化が地域の中小病院における生き残りの戦略となるかどうか検討してみました。

 本制度は、本年4月よりスタートし、現在まで4つの法人(尾三会/愛知県、はりま姫路総合医療センター整備推進機構/兵庫県、備北メディカルネットワーク/広島県、奄美南部メディカルケアアソシエーション/鹿児島県)が認可されています。まだ始まったばかりですので、今後の経緯を注視していく必要があると考えますが、その内容を検討しますと、法人設立までにクリアしなければならないこと(規制など)が非常に多く、経営的なメリットとなる診療報酬上のインセンティブが設定されていないこと、介護分野で参加できる事業者は非営利法人のみとされていることなどの問題があげられています。

 「地域連医療携推進法人」化を検討しながらも申請が見送られたケース(理由)としては、「参加医療法人等を集めることが出来なかった(賛同者を集めることが出来なかった)」、「地元医師会との調整が上手くいかず、医療審議会において認定が見送りとなった(賛同者は集まったが、その後のプロセスが上手くいかなかった)」などがあげられており、なかなか難しいようです。また、本制度を利用して、大規模法人による地域医療機関の囲い込みや系列化なども懸念されているようです(M&Aの違う手法?)。

 「地域連医療携推進法人」となった場合のメリットとして、その連携業務内容(代表例)について、前記4法人の掲示内容を比較してみましたところ(下表)、すべての項目を満たす法人は現在のところないこと、これらの項目が「地域医療連携推進法人」でなければできない項目であるかどうか、ということも今後の検討課題と考えられます。

 従来と異なる地域医療連携の新たな項目として、地域での医療機関の機能のすみ分け、診療科の再編、病床の融通(病床数の削減などと関係)、医療従事者の派遣などが明確にあげられており、地域の中小病院の生き残りを考える上では、検討するに値する内容とも考えられます。

  業務内容 尾三会 はりま姫路総合医療センター整備推進機構 備北メディカルネットワーク 奄美南部メディカルケアアソシエーション
1 過疎化が進む地域での医療機関の機能のすみ分け      
2 病院⇒在宅医療・介護の再構築    
3 医療機関間で競合する診療科再編        
4 医薬品・診療材料の購入調整    
5 医療機器の共同利用など        
6 医師・看護師・コメディカルの派遣、共同採用  
7 人事交流、共同研修  
8 人事交流、共同研修  
9 地域包括ケアの推進  
10 病床の融通      

 また、これまで「地域医療連携推進法人」の設立を目指して進めてきたが、地域の将来的な状況(人口減少や医療従事者の不足など)を考えたとき、緩やかな連携から最終的に「合併」を目標とすることとなり、「地域医療連携推進法人」を経る必要がないのではということで断念した例も報告されています。すなわち、「地域医療連携推進法人」の設立自体が「目標」ではなく、将来その地域での医療がどうあるべきかという「目標」を設定することが大切ということです。

 医療の崩壊はすでに地方から始まっていることを念頭に置き、前記の業務内容を参考として、早急に地方における多職種・多施設・自治体の協力の下での地域包括ケア体制の構築が望まれるところです。その中に中小病院の生き残り方が存在しているものと考えます。

 今回の「地域医療連携推進法人」がその例となるかどうか、今後の成果を注視していきましょう。

参照:第21回日本医業経営コンサルタント学会(広島)発表・講演内容(2017年11月16-17日)等参照

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