病院・診療所の経営

AI&ロボット化は人手不足の解決策(パートナー)となるか? その1

〜人手不足となっている原因と病院の将来〜

 現在、多くの業界で人手不足が話題となっております。規制緩和による外国人労働者の採用が可能となって来ておりますが、人数が増えれば問題が解決するとはいえないのではないかと考えられます。人手不足となっている業界の一つが病院などの医療・介護業界です。実際に専門職確保のご相談も多くなってきております。今回以下の視点で調査・分析を実施致しました。

 人手不足に影響する要因としまして、人口の変化、病院の変化、医療関係者の変化などがあげられます。

 人口の変化としては、現在の約1億2,000万人の人口が、徐々に減少して行き、2055年には1億人を切り、2060年頃には約9,000万人となると推計されています(図-1)。人口は減少しますが、65歳以上の高齢者が増え、患者数は増加するといった矛盾が生じています。その上、労働人口(15~64歳)が急激に減少し、さらに人手不足となると推測されています。0~14歳の減少は、さらなる労働人口の減少を加速することとなります。

 病院の変化としては、病院数も年々減少し(特に50~99床と200~299床の病院の減少が顕著)、診療所(無床)の増加が進展しております。診療所が増加しているということは、病院の勤務医が減少しているということであり、病院が立ち行かなくなる、救急医療なども含めて患者の不利益が増すということでしょうか。しかし、今後患者数は増えるものの、医療需要よりも介護需要が増えることとなり(図-2)、病床数を減らし、在宅へと移行させる政策からも、従来の外来患者対応的な診療所が経営的に成り立っていくかどうか疑問の残るところです。可能なのは、大都市圏でも限られた地域ではないかと推定されます。

 地域的には、病院数や医師・看護師数などの分布は、西高東低となっており、偏りが確認されています(図-3)。医療系の大学や専門学校数の片寄りも関係しているのではとの報告もあります。関東では、埼玉県は全国最低の状況で、人手不足にも地域的な偏りのあることが確認されます。地域医療のあり方を真剣に考えなければなりません。

 また、医療関係者の変化としては、現在医師は約32万人いる中で約15,000人が未就業であり、高齢化も進んでおりますし、専門的な偏り(産婦人科医、小児科医などが少ない)もあるようです。看護師数も約170万人いる中、約35万人が未就業との報告もあります。未就業の理由としては、業務の大変さも原因かと推察されます。他の専門職も同様と推察されます。

求人対策としては、当然医療系の大学・専門学校への求人、各協会への依頼、広告(ホームページも含む)、専門紹介業への依頼、などを実施されていると思われますが、医療系の大学・専門学校への入学者支援(若干採用までの年数が必要)、未就業者の掘り起し(医師は難しいかと推察)、などについて検討されるとともに、現在の人数で運営が可能かどうか(業務負担も軽減)、かつ活性化する対策の一つとして、AI&ロボット化を検討していく時期に、すでに来ているものと考えております。

【参照】
①第6回「病院のみらいWeb」研究会主催2019セミナー「AI&ロボット化は人手不足の解決策(パートナー)となるか?~現場のAI&ロボット活用のみらい~」(病院のみらいWeb研究会 大谷勇作、2019年8月7日)講演資料より抜粋
②総務省「国勢調査」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29推計):出生中位・死亡中位推計」(各年10月1日現在人口)厚生労働省「人口動態統計」月7日)講演資料より抜粋
③厚生労働省・薬剤師会・東京都福祉保健局等よりの資料(2010年)

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