病院・診療所の経営

新型コロナウイルス感染拡大による倒産、休廃業・解散の実態とは?

新型コロナウイルスによる感染症は、新たな変異型(オミクロン株BA.2)の発生により、未だ終息する様子がみられません。日本では、2022年4月現在、感染患者数が約660万人、死亡者数も約28,000人を超えてしまいました。10歳未満、10代の感染患者数が増加していること、死亡者数が減少しないこと、検疫での感染患者数が多い(100人前後/日)ことなど、さらなる拡大が懸念されます。

前回、コロナ禍での病院・診療所の経営状況をご報告させて頂きましたが、今回は、「倒産」、「休廃業・解散」に関する情報をご提供させて頂きます。

現状

昨年(2021年)の医療機関の「倒産(法的整理)」件数は33件でしたが、「休廃業・解散」は567件(倒産件数の約17倍)でした(下図)。

一般に報告されている倒産件数だけでは見えない実態として休廃業・解散という状況があげられ、休廃業・解散の傾向は年々増加傾向にありますが、新型コロナウイルスの感染拡大が追い打ちをかける状況となっています。

休廃業・解散の業態別件数は、「病院」が12件(倒産1件)、「診療所」が471件(倒産22件)、「歯科医院」が84件(倒産10件)でした(下図)。

診療所の休廃業・解散が急激に増加しています。

また、2021年度の調査で、診療所の代表者年齢が60歳以上となっており、世代交代及び後継者問題に加えて、新型コロナウイルスへの感染対策や人材確保などの問題・負担がさらに休廃業・解散の時期を早めているのではないかと推察されています。

【倒産実例】

これまで、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けての倒産の例は、以下の通りです(下表)。

病院名 場所 内容 情報源
松本病院(199床)
(医)友愛会
大阪府
大阪市
倒産(診療報酬不正請求等)
(負債総額:約52憶円)
帝国データバンク&
共同通信(20210826)
東松戸病院(181床) 千葉県
松戸市
市立福祉医療センター東松戸病院と介護老人保健施設を2024年3月末まで廃止 毎日新聞(20210923)
新宿都庁前アイランド
耳鼻咽喉科など※
(医)社団愛州会
東京都
新宿区
破産
(負債総額:約43,000万円)
帝国データバンク
(20211026)
せせらぎ通りクリニック
(産婦人科・小児科)
北海道
旭川市
破産
(負債総額:約31,000万円)
帝国データバンク
(20211028)
鹿島眼科
(医)修仁会
栃木県
足利市
倒産
(負債総額:約16,000万円)
帝国データバンク
(20211101)
逗子中央耳鼻咽喉科
(医)社団湘南
神奈川県
逗子市
閉鎖&破産
(負債総額:約4,000万円)
東京商工リサーチ
(20211031)
藤井整形外科リハビリ科
(医)社団恵慈会
埼玉県
川口市
閉鎖&破産
(負債総額:約11,000万円)
東京商工リサーチ
(20211031)
はんがい眼科など※
(医)クラルス
埼玉県
さいたま市
破産
(負債総額:約12億円)
東京商工リサーチ
(20211115)
あまきクリニック
(医)社団慶緑会
東京都
港区新橋
破産
(負債総額:約26,000万円)
東京商工リサーチ
(20211227)
猪苗代病院(60床)
(医)順化会
宮城県
気仙沼市
破産
(負債総額:約3億円)
東京商工リサーチ
(20220318)

※複数のクリニックを運営していた法人もあり

今後

新型コロナウイルス感染症の終息時期が未だ見えない、さらには第7波が来るのではと推察されている現状で、診療報酬改定がなされましたが、診療所の減少という実態がある中で、かかりつけ医(診療所)の確保は十分でしょうか。特に地方では難しいように思われます。しかし、逆に、かかりつけ医(診療所)の活躍が期待されてる状況ともいえますので、感染対策を含めた新たな展開が求められます。

[参照]
1.帝国データバンク調査結果「医療機関の休廃業・解散」(2021年)の資料より抜粋
2.その他、新聞・ネット情報などより抜粋

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