病院・診療所の経営

機密文書の問題と処理方法

近年、多くの病院・診療所でもデジタル化(クラウド化も含む)が進み、紙の使用が減少しつつあると推察されるものの、未だカルテ、処方せんなどに紙が使用されているというのが現状です。これら病院・診療所の書類(機密文書)は、法的に保存期間が定められているため、ある一定期間、保管しなければなりません。

では、その量はどのくらいとなるのでしょうか。

1例として、規模的に予想しやすい薬局へ来る院外処方せんの量を検討してみました。

処方せんは、B5サイズですが、その枚数と重さを単純計算すると、患者1人当たりの処方せん枚数を1枚とし、来局する患者数を100人/日とすると、1日の合計枚数は100枚、月(30日)では3,000枚となり、年間36,000枚と算出されます。前記したように処方せんは、3年間保管しなければなりませんので、3年間で108,000枚となります。ただし、1人の処方せんが複数枚となる場合は、さらに増加することとなります。

さらに、B5用紙1枚の重さは約3gとされていることから、重量を計算しますと、年間108,000g(108kg)となり、3年間で324kgとなります。

いずれも、薬局の規模、すなわち処方せん枚数にもよりますが、大規模病院前の薬局では1,000枚/日となる例もあり、10倍の枚数(1,080,000枚)及び重量(3,240kg)となりますため、薬局内に保管のためのスペースが必要となり、保管スペースがない場合には、別途保管庫を借りる薬局もあるとの報告がなされています。

薬局の例をあげましたが、当然処方せんを発行する側である病院・診療所でも紙媒体等(カルテ、X線フィルムや照射録、処方箋、透析記録、入院に伴う病棟日誌や検温表などの看護記録などの諸記録)が多量に発生し、保管されています。

カルテは5年間、X線フィルムや照射録、処方箋、透析記録などの諸記録は3年間の保管が義務付けられていますので、薬局以上に広い保管スペースが必要となります。法的な保存期間を超えて長く保管している所もあり、保管場所の確保が必要となり、スペースだけでなく費用的な問題も発生しています。

法的に廃棄が可能となったカルテや処方せんなどを処理することで保管スペースの維持が可能となりますが、これらの書類等は患者情報を含むもの(機密文書)であるため、一般廃棄物として簡単に廃棄することは不可であり、適切な処理を行う必要があります。

これらの機密文書を適切に処理する企業があり、下表は、ネット検索した企業例です。

エコシュレッドサービス エコモーション 大塚商会
小田商事 上山商事 竹下産業
テルヰ(テルイ) デルエフ 日本通運
東京レコードマネジメント 日本シュレッダーサービス 日本パープル
日本フォレスト 山崎文栄堂 ヤマトロジスティクス
ワタコー 東武デリバリー株式会社 買取王子
NTTロジスコ 永田紙業株式会社 美濃紙業
奥富興産 リンクル JSR-NET

病院・診療所がこれらの企業から選択する場合の条件となるものは何かについて調査・検討すると、下表のような認証や体制の有無のあることが確認されます。

企業名(代表例) ISMS
※1
ISO
27001
※2
Pマーク
※3
JAPHIC
※4
リサイクル
※5
証明書
※6
保険
※7
日本フォレスト - -
テルヰ(テルイ) - - - -
日本シュレッダーサービス - - - -
日本通運 - - - -
東武デリバリー株式会社 - - - -
美濃紙業 - - - -
JSR-NET ※8 -
相田化学工業 - ※9 - - -
  • ※1:情報セキュリティマネジメントシステム(Information Security Management System)(国際規格)
    ;一般財団法人日本情報経済社会推進協会
  • ※2:ISMSに関するISO規格(国際規格);一般社団法人情報マネジメントシステム認定センター(ISMS-AC)
  • ※3:プライバシーマーク(国内規格);一般財団法人日本個人情報推進協会
  • ※4:JAPHICマーク(経済産業省関連);特定非営利活動法人日本個人・医療情報管理協会
  • ※5:リサイクルの実施有無
  • ※6:機密文書処理証明書の発行
  • ※7:情報漏洩保険の加入
  • ※8:全国情報セキュリティ&リサイクルネットワーク
  • ※9:「-」は未確認の意味

また、機密文書処理の実際の流れを確認すると、下図(JSR-NETの例)のようになります。
各々専用のBOX、セキュリティカー、処理場(処理方法)となっています。

紙を媒体とする機密文書の保管・処理について問題を抱えている病院・診療所や薬局がありましたら、検討してみては如何がでしょうか。

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