省エネ対策
2022.5.24 Tue
災害時に地産の再生可能エネルギー活用を
脱炭素などの環境問題の解決策の一つとしてだけでなく、東日本大震災以降、台風や豪雨などの災害時の対策として従来の電力供給システム以外に、太陽光などの再生可能エネルギーを活用する自治体が増加してきています。
供給量が多い、安価であるとの従来からの理由で大型の発電システムが導入され、送電もなされてきましたが、停止した際の影響の大きさは、北海道胆振東部地震(2018年9月6日、震度7)で全道が長期間停電状態となったことでも証明済みです。
これらの経験から、緊急時に対応可能な地域に根差した電力供給システムの構築が求められて来ております。
国のエネルギー基本計画(原案)においても、2030年度の総発電量に占める再生可能エネルギーの比率を36~38%に高めると公表しました。
再生可能エネルギーは、SDGs(Sustainable Development Goals:「持続可能な開発目標」)でも地球温暖化対策とエネルギー問題を解決できる重要な対策の一つとして取り上げられおり、災害時のBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)対策の一つともなっています。
では、その再生可能エネルギーの種類にはどのようなものがあるのか、大枠を確認してみますと、下表のように分類されています。
種類 | 概要 | |
---|---|---|
太陽光発電 | 平地、ビル屋上、一軒家の屋根などに設置 | |
風力発電 | ウインドファーム | 広大な山間部や海岸沿いに設置 |
沿岸の洋上風力発電 | 沿岸や港で陸上同様に管理できる場所に設置 | |
着床式洋上風力発電 | 海底に支柱を立てて海上に設置 | |
浮体式洋上風力発電 | 船のように海上に浮体させて設置 | |
小型風力発電 | 建物や施設の一部や街灯などに設置 | |
バイオマス発電 | バイオマス由来メタン発酵ガス燃料を利用 | |
間伐材等由来木質バイオマス燃料を利用 | ||
一般木質バイオマス・農産物の収穫に伴って生じるバイオマス固体燃料を利用 | ||
農産物の収穫に伴って生じるバイオマス液体燃料を利用 | ||
建設資材廃棄物燃料を利用 | ||
廃棄物・その他のバイオマス燃料を利用 | ||
水力発電 | ダムや河川を活用した水力発電(大規模型) | |
小規模河川、農業用水路、水道局の水道管、下水処理水、工場やビルの排水・水道管を活用した水力発電(小規模型) | ||
Wave Energy(波力電力) | 波の動きを利用した発電 | |
地熱発電 | 温泉から出る蒸気や熱湯を利用した発電 | |
太陽熱発電 | 太陽熱によって生じた蒸気を用いた発電 | |
雪氷熱発電 | 冬期に降った雪や、冷たい外気で凍らせた氷を貯冷庫などに貯蔵し、気温が上がり冷気が必要となった中間期から夏期などに利用した発電(北海道などの寒冷地に限定) | |
温度差熱発電 | 夏場は水の温度が低く、冬場は水の温度が高くなる仕組みを利用したもので、水の持つ冷却熱や温暖熱をヒートポンプで活用した発電 | |
その他の発電 | 水素エネルギー発電 | 水や空気から豊富に採れる水素を利用 |
プラスチック発電 | 容器などのプラスチックを燃料として利用 | |
微生物エネルギー発電 | ミドリムシなどの微生物を燃料として利用 |
代表的なものとしては、太陽光発電、風力発電、バイオマス発電などがありますが、この中で、小規模な河川、用水路、砂防ダムなどを利用した小(規模)水力発電は、雨天・夜間や風のない日でも安定して発電でき、環境への負荷も少なく、河川や用水路などの多い日本に適したシステムであり、地域に根差した発電システムとなると考えられます。
現在まで稼働している小水力発電の事例は、下表の通りです。
設置場所 | 公表(年) | 会社 | 概要 |
---|---|---|---|
福島県会津若松市 | 2014 | アサノ大成基礎エンジニアリング | 出力130kw予定(計画) |
福島県大玉村 | 2014 | 未定 | 出力70~100kw予定(検討) |
福島県下郷町 | 2015 | 丸紅・三峰川電力 | 年間出力100万kw予定 |
富山県朝日町 | 2021 | 日本水力発電 | 年間売電収入1億8千万円を見込む |
その他、全国小水力利用推進協議会の調査(2017年度)では、登録されている約650ヶ所の中、静岡県富士宮市で11ヶ所、広島県庄原市で9ヶ所、山梨県北杜市で8ヶ所、岡山県津山市で7ヶ所、富山県富山市で6ヶ所、京都府京都市で6ヶ所の順番に多かったと報告されており、今後も設置の計画が進められているようです。
なお、再生可能エネルギーの病院導入事例としては、徳島県那賀町立那賀病院(40床)では2014年の台風で停電に見舞われましたが、酸素吸入器などの医療機器は自家発電で、照明や電子カルテなどを見る端末などは再生可能エネルギーの供給システム(太陽光10kW/蓄電池あり)で回復できたとのことです。約2,300万円の設置費用は、国(環境省等)の防災拠点への再生可能エネルギーの支援基金で賄えたとのことです。
水源等の整備などの他、送電と費用の問題はあるものの、災害時対応を見据えた、小規模な種々の再生可能エネルギーを利用した地産電力供給システムの導入が求められる時代になって来ています。